家のコト

World Life Style~わたしの国の住まい事情~

ヤシの木揺れる庭とプールのリゾート感。 アンコール・ワット近くの一軒家で優雅に暮らすファミリー。

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海外の家や暮らしをレポートする「World Life Style」。第31回目は、世界遺産アンコール・ワットを擁する、カンボジアのシェムリアップから。クメール様式を多く取り入れた家で、ゆったりと暮らすジャンクロース一家をご紹介。ヤシの木が生える緑多い庭、白壁に木目装飾の落ち着きのあるお宅はとても魅力的。子供の誕生日には、プールサイドでBBQを楽しむなど、「日々リゾート」な生活を送っている。

クメール様式の内装を取り入れた、クメール・西洋折衷のお宅

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ジャンクロース家の暮らす家は、アンコール・ワットで有名な観光地のシェムリアップにある。在住の外国人も国籍問わず多く、街中にはお洒落なカフェなども建ち並ぶところだ。ジャンクロース家はクメール人のリァッカナーさんとフランス人のご主人ベンティットさん、娘のマイヤー、息子のアレックスの4人家族だ。2匹の大型犬(ヴァニーとクッキー)も飼っており、広い庭を自由に走り回っている。
「クメール様式」とは、アンコール・ワットを建立したクメール王朝の時代に、ヒンドゥー教と仏教の様式が融合して生み出された、文化や美術の様式だ。もともとは石造りの塔型建物の建築や、砂岩に彫られたレリーフ(彫刻)などが特徴だったが、生活スタイルの変化に伴い、昨今は天然木仕様の内装やインテリアなどに用いられることが多い。

落ち着いた茶色を基調とした内装とデコレーション

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「広い庭に白い建物が青空に映えて素敵だな」と思いこの家の購入を決めたというおふたり。ご主人の大好きなクメール様式の内装を取り入れたくて、窓枠や壁に木材を使用し、白壁から落ち着いた雰囲気の建物へアレンジ。リビングのソファも茶系でシックにまとめた。

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壁面が一面ガラス張りとなっているリビングは、カーテンを開けると開放感満点だ。明るい陽光が差し込むリビングでは、照明がなくても“自然の中で暮らす”、という贅沢を日々感じられるという。この家のメインスペースだが、風通しが良い場所で心地よいのか、飼い犬ヴァニーのお気に入りのお昼寝スポットになっている。

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カンボジアの建築方法は、4メートル毎に支柱を建てるため、玄関ポーチの真ん中にも白い柱があるのが特徴。玄関前の広いポーチにはご主人が休日に子供たちと遊ぶために買った、卓球台が置かれている。現在、ご主人は首都プノンペン勤務のため、帰省時に子供たちとプールで寛ぐが何よりの楽しみだという。

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特注サイズの木製の玄関扉は、開け放しておくことが多い。犬が出入りするためもあるが、玄関前からリビングまで吹き抜ける風が心地よいからだそう。リァッカナーさんがキッチンで得意のお菓子を焼くと、庭やプールまで甘い香りが漂い、遊んでいる子供たちの顔もほころぶ。

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キッチンは“リァッカナーさんの場所”という事で、ご主人の趣味のクメール装飾ではなく、冷蔵庫と同じステンレス製で揃えスッキリとまとめられている。冷蔵庫にはファミリーの写真や学校行事の連絡メモなどが貼られたりと、ほのぼのとした一面も。奥にはオーブンも置いてあり、お友達が来た時やホームパーティーの際には、お手製のパスタやピザを振る舞う。

シーリングファンの回る天井高の広々とした寝室

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2階の2室は寝室として利用し、主寝室は約40平米と広い。床、窓枠、ベッド、梁などに天然木がふんだんに使われたクメール様式のインテリアでダークブラウンの色味が高級感と落ち着いた雰囲気を醸し出している。天井を高くとり、屋根の瓦が見えない様にと張った、い草仕様の天井もポイント!!
ヘッドボードには子供たちのお気に入りのぬいぐるみが並ぶ。ベッドは木造のオーダーメイドで、ヘッドボード裏にはたくさんの棚を備え付け、荷物が置ける様になっている。また、室内にあるシャワー&トイレはドアの無いオープンなつくりに。

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天井には、シーリングファンを設置。暑さが籠らない様に、天井高にするクメール家屋では、エアコンの冷気が行き渡りにくいため、シーリングファンが備え付けられていることが多い。羽が白いものが多い中、ご主人のこだわりで茶色のファンを使用。

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洗面台はシンプルで機能的なつくり。オーダーメイドの鏡と洗面台は、子供たちも使いやすい高さになっている。

誕生日パーティーはプールサイドでBBQという夢を実現

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カンボジアには公共のスイミング施設はない。街のホテルのプールで泳ぐか、資金に余裕のある家庭は、大小に関わらず庭にプールを作ってしまう。近年、街の中心部は不動産バブルで大層値上がりしているが、少し離れれば広い土地が購入可能だ。
ジャンクロース家のプールは広々と25メートル程。深さは1メートルから徐々に深くなっているので、子供の泳ぎの練習にも最適だ。年中、常夏のカンボジアでは、子供たちが友達を連れてくると、「まずはプール!」とばかりに飛び込んでいくそう。

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子供の誕生日パーティーの際は、炭火バーベキュー設備で肉やソーセージなどを焼き、プールサイドで頂く。庭に生えているマンゴーの木は4〜5月頃には熟れた実がたくさん採れる。この日も「木に巣食う赤いアリがいて困るのよ」と言いながら、リァッカナーさんは嬉しそうにマンゴーを収穫していた。

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二匹の大型犬ヴァニーとクッキーは、基本的に放し飼いなので、広い庭で大いに寛いでいる。気性はおとなしいが、番犬としても立派に働いている。初めての来訪者には容赦なく吠えるので、かなりの迫力だ。

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二階のテラスはタイル張り。オープンエアーにも関わらず、歩く足元は涼しい。

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テラスから庭を臨むと、広い庭に緑が広がる。まるでリゾートホテルの一室から庭園を見下ろしているかのよう。

偉大な王「ジャヤーヴァルマン7世」

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カンボジアでは、約95パーセントの人が仏教徒。人々の生活や精神に深く精霊崇拝(アニミズム)が根付いている。土地神や先祖神に対する信仰で、通常、家の庭先に小さな祠をつくって祀る。クメール王朝時代から領土の拡大縮小に伴い、主となる宗教も変化し、色々な神様が混在する事を異と思わない環境ができた。王朝時代にはヒンドゥー教も入っていたので、未だにアンコール・ワットの中には、ビシュヌ神やシヴァ神の石像も祀られている。家の中には、小さな仏陀像を置くことも珍しくない。信仰としてもインテリアの一つとしても仏陀像は人気がある。

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木彫りの像は置物としてポピュラーだ。縁起を担いでか、日本の恵比寿様や中国のカエル像の前では、お線香を炊ける様になっている。本棚にはフランス語や英語の料理本なども並んでいる。こちらはアジアと西洋がコラボレーションしたリァッカナーさんの趣味空間だ。

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クメール王朝時代(11世紀~15世紀)に、領土を東南アジアのほぼ全域まで広げ、病院施設なども造った偉大なジャヤーヴァルマン7世は、今でもクメール人にとって尊敬と敬愛の対象だ。彼の頭部の石像は大人気で、大きさに関わらず、大切に祀ってある家庭は多い。

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■プロフィール■
奥さんのリァッカナーさん(36歳)はクメール人で、シェムリアップにあるフランス系の調理学校を卒業。現在は専業主婦。
ご主人のベンディットさん(44歳)はフランス人で、首都のプノンペンにあるカンボジアの5つ星ホテルにマネージャーとして勤務。
娘のマイヤー(10歳)は、インターナショナル校に通うトリリンガル(英語・フランス語・クメール語)。算数が苦手なので克服しようと努力中。お母さんと一緒にマフィンを作って食べる時が幸せ。
息子のアレックス(4歳)は、お姉ちゃんと同じインターナショナル校の幼稚部に通う男の子。いつも元気いっぱいで、プールで遊ぶのが大好き。
犬のヴァニーは10歳になる老犬で人懐っこい。風通しの良いリビングで寛ぐのが大好き。1歳半のクッキーは、元気いっぱいが過ぎる時もある美人さん。二匹とも大事な家族の一員だ。
〜住まいについて〜
2005年、約50坪の家屋付で500坪の土地を約17万ドル(約1,870万円)
で購入。キッチンとダイニング、プライベートプールは計6万ドル(約660万)かけて増築した。

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■カンボジア・シェムリアップの不動産事情■
シェムリアップは、ユネスコ世界遺産のアンコール・ワットを擁するカンボジア随一の観光地である。街自体は小さいが、オールド・マーケットと呼ばれる中心部と、それ以外の住宅地では土地の値段も家賃も大きく変わる。カンボジア全体の傾向としては、20年前と比べると国道沿いの土地が20倍程値上がりした。
カンボジアでは、外国人の土地購入が認められていないため、配偶者がクメール人であるか、信頼できるクメール人名義で土地を買わなければならない。戸建ては、場所、広さ、部屋数にもよるが、売主さんの気分で価格は大きく変わる。建物を建てる場合、1階建ての家で3万ドル(約330万円)〜。
賃貸の場合、トイレとシャワー、ファンのみの部屋の家賃が50ドル(約5,500円)〜。エアコンや家具付きの場合は150ドル前後(約16,500円)、一軒家は広さや部屋数にもよるが、家具付きで300ドルから1,000ドル程度(約33,000円~110,000円)が相場だ。不動産屋を活用するのは在住外国人が多く、手数料に1ヶ月分の家賃が充てられる。SNSの宣伝も多いが、契約書を用意していない事もあるので要注意。賃料の値上がりは大家次第なので、良好な関係を築いておくことが必要

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